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インターネット社会とセキュリティ ― 安全なコミュニティネットワークの実現のために

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誰でも、いつでも、どこからでも簡単にインターネットにアクセスできるという便利性は、一方で見知らぬ他人がいつ何時、ネットを通じて個人や企業に侵入してきてもおかしくはない状況を生み出しました。インターネットを最大限に活用して個人がさまざまな目的を達成したり、企業が取引の円滑な遂行やビジネスチャンスの獲得を図ろうとすればするほど、もはや情報セキュリティは無視できないものとなっています。セキュリティを一部の人に任せておけばよい時代は終わりを告げ、最低限のセキュリティ対策を施すことは常識といってよいでしょう。むしろこれからは一定の方針のもとに積極的に取り組んでいる姿勢をはっきりと示すことが重要です。自らが知らないうちに被害者になるばかりか加害者にもなりかねない中では、セキュリティの強化なしには取引先の信頼が得られないからです。ネットワークセキュリティについてどのように考えるべきか、その現在と将来を探りました。

Quality of Lifeを左右する大きな鍵

電気通信大学情報通信工学科 教授・工学博士 三木 哲也 様
電気通信大学情報通信工学科
教授・工学博士
三木 哲也 様

 インターネットの普及にともなって社会生活に大きな変化が始っています。インターネットがビジネスの場に入りこの5、6年でわれわれの仕事のやり方はまったっく変ってしまいました。電子メールなしの仕事はほとんど考えられなくなりました。企業活動におけるインターネットのインパクトの大きさは既に十分認識されていますが、同じような変化、いやそれ以上の変化が生活の場面でいよいよこれから始まろうとしています。

 日本のインターネット利用者は、携帯電話による利用の急増もあり、すでに3,000万人程度に達していると推定されます。通信回線の広帯域化と通信料の低減、使い易い端末の出現、小中高校のインターネット環境の拡充、地域情報ネットワークの推進などによって、インターネットの効用は一層高まり、全ての家庭に普及してユニバーサルサービスとなる日も遠くないものと思われます。

 生活の中でどのようにインターネットが利用されるかは、単に一人一人の生活が便利になるというだけではなく、都市部においては希薄になってしまったコミュニティの再生やネット上での新しいタイプのコミュニティの創生、地域社会の教育力の回復、生涯教育の発展、生活環境の改善、ひいては個々の生活者のQuality of Lifeを左右する大きな鍵を握っていると言えます。

 しかし、現在のインターネットは、ネットワークの信頼性、安全性をはじめ、コンテンツに関わる様々な課題が山積している状況です。特に、次世代のユニバーサルサービスとしてインターネットを発展させてゆくには、不正アクセスやウィルス、あるいは情報の盗聴、改ざん、破壊などの攻撃からシステムやユーザを守る必要があります。また、インターネットの利用法やコンテンツに関しては、誹謗・中傷、プライバシー侵害、知的所有権侵害、詐欺・犯罪行為、不良情報・アダルト情報の配布などを防止する方策が不可欠となります。さらに、情報弱者が生じないようにする方策が求められます。

 このように、インターネットの可能性は極めて大きい反面、陰の部分を克服するための課題が山積しています。これらは全て、インターネットにまつわる広義のセキュリティ問題です。

きめ細かな情報流通の管理とユーザ支援

 セキュリティ問題の解決には、ネットワークやシステムへの対策はもちろんのこと、ネットワークの運用と利用に関する法律・規則の整備、情報倫理の啓蒙・普及、さらにトラブルに対しての支援策を総合的に進めてゆく必要があります。

 さて、企業など組織社会でのネットワーク環境はどうなっているでしょうか。業務の目的や性格に応じて自らネットワークやサーバを構築・運用し、種々の業務グループに応じて情報の流通や蓄積を管理し、業務に必要なユーザ支援が行われているのが実情でしょう。

 多くのところで、自らネットワークの運用規則や利用規則を作り、不正アクセスやウィルスへの対策も日夜行われていて、安全なネットワーク環境を維持するために専門の部署を置いたり、アウトソーシングが行われています。このような多大な努力によってはじめて必要な情報共有、情報検索、情報交換などが安全に効率良く行われている、といっても言い過ぎではないでしょう。

 ひるがえって、生活の場でのネットワーク環境はどうでしょう。まだ電話網(ファクシミリを含む)による情報交換への依存度が大きいかも知れませんが、ネットワークを流れるトラヒック量は、既にインターネットが電話網を追越す状況にあって、10年後にはインターネットトラヒックが電話トラヒックの1,000倍ないし10,000倍ほどにも増すことが予想されています。

 したがって、一般社会のネットワーク環境もインターネットをベースとしたものに間違いなく変ってゆくと思われます。この場合、セキュリティ問題の解決には、企業など組織社会における場合よりもっと多くの努力が必要になるでしょう。それは、ひとえにユーザの多様性、すなわち利用目的、年齢層、スキルなどの個人の属性や、地域や住居の特質などが千差万別であるところに起因します。急速にインターネット社会へと移行している現在、先に述べたように、ネットワークへの対策、法律・規則、情報倫理、ユーザ支援策など総合的なセキュリティ問題への取り組みが焦眉の急となっています。

 生活の場におけるインターネットの役割も、機能的に突き詰めれば仕事場と同じで、その場面に参加しているユーザのグループにおいて必要な情報共有、情報検索、情報交換などを安全に効率良く行うことであるわけです。したがって、そのようなユーザグループごとに相応しいネットワーク環境を作って、企業などで行われているのと同様な、いやそれ以上にきめ細かな情報流通の管理やユーザ支援を行うことが求められるのです。

インターネットへのアクセスはダイアルアップ接続から常時接続に変り、急速にブロードバンド化が進むと思われますので、ネットワークの構造上も企業内ネットワークの環境と類似してきます。

コミュニティネットワークにおける4つの機能

 このような環境はコミュニティネットワークと呼べますが、便利で安全な環境とするめには次の4つの主要素をバランス良く備えている必要があります。まずグループのネットワーク環境を作る機能です。生活の場におけるグループは極めて多様ですし、不確実性も大きいと考えられます。また、それぞれのユーザのアクセス回線、端末、能力はまちまちで、中にはインターネットにアクセス出来ないユーザもいます。そのような多様なユーザ間で安全に情報流通を可能とするためのプラットフォームを作る必要があります。

 2つ目は、そのグループが利用するコンテンツの管理をする機能です。インターネット上の情報は限りなく増え続けるでしょうが、グループが必要とする情報を安全に効率良く確保し、また情報交換するために、情報の属性や著作権を見極めて情報の流通をコントロールすることが非常に重要です。

 3つ目はネットワークセキュリティで、これは言を要しないと思います。4つ目はユーザ支援です。多様なユーザが、家庭からあるいは移動先から多様なアクセス回線を使い、多様な端末やアプリケーションソフトを用い、またそれぞれが時間的に変化してゆく訳ですから、ユーザが戸惑うことのない環境を維持するためには不可欠な要素です。

 インターネット端末を持たない人は電話やファクシミリからでも、また身体障害者の使う端末からでも、情報流通が出来るようにするためのメディア変換やヒューマンインターフェイスの支援も必要です。企業内ネットワークにおいても、ユーザ支援には多くの労力を要するところですから、コミュニティネットワークにおいては一段と充実したサポート体制が望まれます。

 インターネット社会に向けて広義のセキュリティを維持するためには、このようなコミュニティネットワークを整備してゆくことが急がれますが、同時に情報リテラシーが広く行き渡ることが何と言っても重要であると考えます。これから、学校インターネットの普及や、インターネットユーザが一層拡大する中で、ユーザ全てに対して情報関連の基本的な法律・規則の知識と情報倫理が根付くように、それを定期的に確認するような施策も検討してゆく必要があるかも知れません。さらに、トラブルに備えて相談窓口や損害保険などの環境を整えることが望まれます。

コミュニティネットワークプラットフォームに必要な主要機能
コミュニティネットワークプラットフォームに必要な主要機能

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