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「自己責任原則」で共通するLinuxとビジネスの本質
羽生 章洋氏は、汎用機上での業務システム開発やUNIXサーバーをベースとしたERPなど基幹システム開発に携わった経験を持ち、それを生かして、企業のシステム導入におけるコンサルタントとして活躍、システム開発について熟知した経営者です。一方でLinuxユーザーとして、新しい音楽ライフスタイルの提案を行う音楽体験サイトを運営。同サイトは、オープンソースAPサーバーのEnhydraを活用して、羽生氏自らがシステムを構築しています。エンジニア、コンサルタント、ユーザーなど多様な立場での経験を通して、Linuxについて語っていただきました。
- プロフィール
有限会社エア・ビート/有限会社エア・ロジック
取締役兼CEO 羽生 章洋羽生氏の運営するエア・ビートは、「テクノロジーを通じて日本のアマチュア・ミュージックシーンの活性化を実現する」ことを事業理念としている音楽体験サイト。アマチュアミュージシャンが楽曲を登録し、それをみんなでコメントすることで新しい音楽市場の創出をねらっている。インターネット、オープンソースにふさわしいコンセプトにもとづくサイト。
一方のエア・ロジックはテクノロジーとビジネスコンサルティングを通じて企業の利益向上に貢献することを事業理念としているEmotion Technologyカンパニー。企業競争力の基本である商品開発・マーケティング・組織活性化・事業戦略の4つのポイントに対して、単なる提言だけでなくクライアントと一緒に取り組むことによって利益向上を実現している。
羽生氏の最新著作として「PostgreSQL」「Enhydra入門」(10月刊行予定)がある。羽生氏のメールアドレスは、habu@air-beat.com
コストパフォーマンスに優れるLinux

有限会社エア・ビート/
有限会社エア・ロジック
取締役兼CEO
羽生 章洋 様
クライアント・サーバーシステムが普及し始めた当時、私はUNIXサーバーを使用して基幹系の業務システムを開発していました。そのときに違和感を覚えたのは、汎用機に比べてシステム開発費が「安い」と周囲の開発者たちが口にしていたことです。安いって本当だろうか、むしろどうしてそんなに汎用機は高いのかと、思いました。本当はUNIXサーバーを使ったときの価格の方が適正なのではないか、と感じたのです。
その高さは信用代が含まれるいわばブランド代でもあるわけですが、システムを作るのにそのようなもの、つまりブランドが必要なのだろうかというのが当時の疑問でした。その後自分自身が会社を経営するようになり、重要なのはブランドではなく、本質的な価値に見合った価格であると考えるようになりました。つまりコストが安くて技術的に同じパフォーマンスが得られるならば、安さを選択することがビジネスを有利に展開させるということです。
私が初めて会社を発足させWebサイトを立ち上げた時は、資金的に厳しかったこともあり、安いコストでシステム構築しなければならない状況がありました。そのためOSの選択では2週間検討した末にLinuxで行こうと決断しました。商用製品ではないため不安もあったのですが、Linuxは要件を満たすスペックを備えており、十分使えると判断したのです。また、高いコストを払って、いくらテストしてみたところで、本番稼働してみないことには円滑な運用が可能かどうかは不明なわけですから、Linuxに賭けてみることにしたのです。
コストを削減するために選択したという理由は、いかにも消極的選択のようであります。しかしそれは同時に、いくら費用を投資しても毎日面倒を見るのは自社であり、自社に対して責任を取る意味でLinuxにしようという積極的選択でもあったのです。
Linuxのように、自己責任と明示されているものを使用するのは、会社経営者としていさぎよいのではないかと思ったのです。つまるところ、ブランドに頼るということはどこかで責任回避を考えているということかも知れません。
普通に使えてごく当たり前のことができるOS
システム構築のビジネスコンサルティングを行う時は、エンドユーザーの代表として、お金を使って本当に業務が改善できるのか、本当に役に立つのかを判断するわけですが、顧客企業に最もコスト削減ができるビジネスの方法、コストパフォーマンスの高い業務改善を提案できなければなりません。
OSを分類するのにオープンソースかクローズか、有償か無償かという2つの軸による分け方があります。要するに4象限にわかれ、Linuxはオープンソースで無償ということになっています。私の場合は、無償ということが先にきてオープンソースだというとらえ方をしています。OSのコストが下がった分を、もう一段企業としてレベルアップするための他の投資に回せるわけです。情報化投資のコスト意識を高めるにあたり、Linuxの検討はシステムコストを見直すきっかけになるのではないでしょうか。
それでは技術的な観点から見るとどうでしょうか。結論から言うならば、Linuxが特段優れているということはありませんし、ごく普通です。他のOSで当たり前にできることがLinuxでもできるということです。Linuxは間違いなく使えますし、実際に使えています。エンジニアとして私も使ってきました。
エンジニアとしてLinuxを見た場合、普通に使えて、妙なところではまることはありません。原因不明の現象が起こることはないのです。「こういう設定だと、こういう障害が起こるのか」と自分が悪いことが納得できる。予測不可能な挙動に悩まされることがありませんし、よくわからないエラーのために余計な作り込みをする必要がありません。
ビジネスコンサルタントとして、顧客が最新技術を使う場合にリスクマネジメントを提言するケースがあります。多くの場合、「ちょっと待ちなさい、本当に有効ですか、大丈夫ですか」ということが多いのです。これは本当に利益に貢献するのですかという意味でです。
しかし、Linuxを使うことのビジネスリスクの可能性をいちいち言う必要はまったくありません。商用OSに比べてまったく遜色ないのです。したがってエンドユーザーに対しては、用途にもよりますが「積極的にLinuxを使うべき」と奨めることになります。
所詮OS、されどLinux
世の中の価値観はオープン性、公開性、透明性というのが大きな流れになっています。企業にとってオープン性が求められているのは財務であり、技術の面ではプログラムソースです。社会に開かれた会社として存立していくには、開かれた道具を使うようにするのが筋道なように思います。オープンソースのLinuxには、開かれた道具としての価値があります。
Linuxが上昇気流に乗った1998年に私はJavaについての1冊の本を出版しており、そのあとがきにこのような趣旨のことを書きました。「いまLinuxに注目が集まっている。OracleがLinux版をついに出した。来年は現場でLinuxが使われる年になるかもしれない」。本当に、その通りになりました。
しかしながら、Linuxは所詮OSです。Linuxを使って売上が上がるでしょうか。顧客が増えるでしょうか。業務が楽になるでしょうか。すべてノーです。Linuxを使って何を行うか、それ次第です。それでも「されどLinux」だと思っています。Linuxは安かろう悪かろうではないからです。安くてもちゃんと当たり前のことを当たり前の品質で実現できることを、きっちりと見せてくれている。これが現時点でのLinuxの価値です。
現段階では、Linuxは既存の商用OSのリプレイスでしかありません。Linuxならではの可能性をまだ見せていないのです。だからLinuxがそのポテンシャルを発揮するのは、これからだと思います。
世の中IT一辺倒ですが、自分の会社を変えるのにITという曖昧で大きな切り口ではきっかけにはなりません。まず、企業が利益を向上させるには、価格・コスト・販売数・回転率の向上、この4つの方法しかないということを再確認すべきです。そしてそれらの実現の一環として、プラットフォームのランニングコストを下げるにはどうするか。Linuxにリプレイスしたらどうなるか試算してみるのも1つの方法です。
Linuxをエンジニアだけに任せているのではビジネスの問題を解決することにはなりません。エンドユーザーとして、また企業経営の観点から、Linuxを戦略的に活用する方法を検討することがますます重要になってきていると思います。「所詮OS、されどLinux」ではないでしょうか。そして自分自身の問題は自己責任で解決しなければならない点で、ビジネスもLinuxも本質は同じです。「所詮仕事、されど我が社」というのと同じではないかと考えています。
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