ピックアップテーマ
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ASPサービスの一貫性を見極める重要性
企業が自社でアプリケーションやサーバーを所有しなくても、ネットワークを介して必要なときに必要なだけアプリケーション機能を利用できるASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービス。システム構築や社内スタッフによる運用の必要がなく、多大なコストをかけないで短期導入ができるといったメリットから、企業における浸透にはめざましいものがあります。その浸透に応じて、企業がASPサービスを利用する方法やパターンも広がりを見せるようになってきました。いよいよ本格的に立ち上がり始めたASPサービスの現状について、ITコンサルタントの立場からレポートします。
高い成長率が期待されるシステムの運用・管理

ガートナー ジャパン株式会社
データクエスト
ITサービス担当
アナリスト
成澤 理香様
ガートナーの調査によれば、2002年の日本のITサービス市場は、対前年比6.0%増の8兆3,000億円にとどまる見込みです。ITサービス市場においては、景気の影響が遅行して現れるため、2001年の景気低迷の波紋が、2002年のサービス市場にインパクトを与えるものと見ています。
厳しい状況が見込まれる2002年のITサービス市場ですが、その中で、最も高い成長率が期待される分野がシステムの運用・管理を行う「ITマネジメント」の分野です。ガートナーでは2002年のITマネジメント市場規模を前年比10.0%増という2桁成長を見込んでいます。当セグメントの成長の背景には、コスト削減のほか、年々拡大・複雑化し続けるシステム環境を自社のリソースで運用しきれなくなったこと、企業のコアコンピタンスへの経営資源のシフトなどがあります。
このように、企業が資産の運用・管理をアウトソースする傾向の強い中、「ネットワークを介してアプリケーション機能や関連サービスをレンタル形式の料金体系で複数の顧客に提供する」ASPは、ネットワーク技術の進歩とともに、新たなサービス提供モデルとして1998年頃から市場に登場し、世界で大きな注目を集めてきました。
新たな付加価値を生み出す基盤としての役割
所有するのではなくアクセスすることによって、必要なアプリケーション機能をすぐに利用できるASPは、世界でブームを巻き起こしましたが、一方で「カスタマイズのニーズへの対応」や「他のシステムとの連携」など、その導入には、多くの課題が残されていることも事実です。現時点では、ASPで実現できる範囲は限定的であり、すべてのソリューションエリアにおいてASPモデルの持つ効果を十分に享受することは難しいようです。
しかし、一方で、必ずしもすべての企業のアプリケーション分野において、高価なソフトウェアを高額のコンサルティングや実装費用をかけて構築し、多大なる負荷をかけて社内の要員によって運用する必要もありません。初期導入コストの低下、社内リソースのコアコンピタンスへのシフト、短期導入、コラボレーション基盤としての利用など、ASPのサービス・モデルに多くのメリットが潜在していることも事実です。
ガートナーでは、ASPの導入に適した分野として以下の項目を挙げます。必ずしもすべてを包含することを前提としていませんが、複数の項目を内包する分野については、システム導入にあたって、ASPがひとつの選択肢となりうることを示唆しています。
- これまで導入されていない新規分野
- バックオフィスとの連携があまり密接ではなく、アプリケーションとして独立して利用される分野
- 運用の負荷が高い分野(24時間365日対応など)
- 複数拠点や複数企業間での利用が前提となる分野
- 不特定多数のユーザーがスポット的に利用する分野
- 制度変更などが頻繁に発生し、継続的なシステムの変更が必要とされる分野
- 非コアな業務分野
現在、ASP市場には多くのベンダーが参入し、様々なサービスが提供されています。単にアプリケーションをネットワーク経由の形態に置き換えただけのものに留まらず、複数の組織や企業が仮想的にコラボレーションを実現する基盤としての利用なども進んでいます。ガートナーでは、ASPは新たな付加価値を生み出す基盤としての役割など、その形態は進化を続けていくものと捉えています。今後、ASPに対する理解が深まるにつれ、ASP事業者主導によるものだけではなく、ユーザーからの提案によって、これまで存在しえなかった様々な新しいビジネス・モデルが実現される可能性をASPモデルは秘めています。
ITサービスのソーシング・マトリックス
ASPの現状と将来の方向性を理解する上で、ユーザー企業のアプリケーションとサービスに対するニーズにおいてASPがどのような位置付けにあるのかを知ることが重要です。図はガートナーが考えるITサービスのソーシング・マトリックスです。「サービスが顧客に与える価値(ビジネス上の成果/ITの効率化)」と「サービスの提供形態(個別型/共有型)」の2軸を基準に、「管理」、「最適化」、「アクセス」、「創造」の4つのソーシング市場が構成されます。4領域におけるユーザーが求める目標は下記の通りです。
「管理」:IT資産価値の最適化がその目標であり、同時にコスト削減などの経済効果が期待されます。ソーシング・マトリックスにおいて最も古くから存在し、成熟しているセグメントでもあります。この領域に入るITサービスの例として、IT運用アウトソーシングがあります。
「最適化」: ここでは競争力強化が重視されます。独自のIT環境とビジネス成果に対応したカスタマイズ・ソリューションがその特徴です。従来型のアプリケーション開発やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)がこの領域の代表例です。
「アクセス」:この領域では、スピードが求められ、サービスはジャスト・イン・タイム式で企業に調達されます。導入・展開における迅速性が必須であるため、提供されるソリューションは、マス・カスタマイゼーションを前提とした1対多の関係となります。この領域の典型的な例としてASPがあります。
「創造」:共有型のサービス提供環境において、ビジネス成果の創出が求められます。例えば、サプライチェーンすべてを巻き込むバーチャル・マーケットプレースなど、ネットワークをベースに、新しい価値連鎖を生み出すビジネス・モデルを創出します。BSP(ビジネス・サービス・プロバイダー)がこの領域の例として挙げられます。
「管理」、「最適化」は従来型のアウトソーシング市場が当てはまります。一方、「アクセス」、「創造」 は、インターネット時代における新しいアウトソーシング・ビジネスを表しています。後者のサービスは現状では未成熟ですが、今後、インターネットを活用した共有型環境へのサービス展開は、アウトソーサーに求める役割を劇的に変えていくと見られます。ASPは「アクセス」に位置付けられますが、今後ビジネス・プロセスと結びつくことにより、現在、萌芽期にあるBSPなどの「創造」の領域に展開していく可能性も秘めています。
企業は今後、自社の求める目標と実現レベルによって、適切なサービスを選択することが求められるでしょう。

複雑な顧客の要求に共有環境で対応が可能に
ガートナーでは、ASPはあくまでも市場の大きな流れの通過点に過ぎず、今後の試行錯誤と技術的進歩の過程で、様々な方向へ進化を続けていくものと捉えています。現在、ASPはアプリケーションをただネットワークを介した提供形態に置き換えただけのサービスから、コラボレーションやビジネス・プロセスを実現する基盤としての役割など、アプリケーション機能だけではなく、ASPモデルそのものが持つ新しい価値を提供する段階へと移行しつつあります。
様々なASPの課題も指摘されていますが、セキュリティーやネットワーク基盤の整備など、今後の技術や市場環境の変化とともに解決可能なものも少なくはありません。さらに、将来的には、Webサービスなどの技術の発展を背景に、複数のアプリケーションの動的な連携や統合が現実のものとなれば、ASPはより複雑な顧客の要求に共有環境で対応することが可能となり、ASP市場に新しい展開を与えると見られます。
企業のビジネス・サイクルが短縮化されていく中で、必要なアプリケーションをサービスとして利用できるASPのような形態は、一部で悲観的な見方も存在しますが、IT市場の大きな流れとして、今後も進んでいくものとガートナーでは見ています。
企業は、ASPの導入にあたっては、自社の目的とその目標レベルを明確化し、その提供されるサービスが戦略とアプリケーション機能、およびその提供方法において一貫性があるのかどうか見極め、その導入の妥当性を検討することが求められるでしょう。
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