ピックアップテーマ
ピックアップテーマ
新たな“窓口事務のIT化”による行政情報の共有化
いま電子自治体で整備が急がれているのは住民基本台帳ネットワーク、総合行政ネットワーク(LGWAN:Local Government Wide Area Network)そして二つの認証基盤(組織認証と公的個人認証)です。住基ネットで個人が11桁の番号を保有すること、LGWANで行政機関どうしが安全に情報交換できる環境を構築すること、認証基盤の整備によって行政機関や住民・企業法人がネットワーク上で相互に信頼できる仕組みを構築することは、お互いに密接な関係を持っています。住基ネットと公的個人認証サービスそしてLGWANと組織認証基盤の4つの要素はいずれが欠けても電子自治体実現は不可能です。 そして電子自治体の究極には、住民との情報共有環境整備が大きな課題であることを認識する必要があります。この情報共有化は、新たな行政窓口事務のIT化として検討しなければなりません。住民サービスを向上させる電子自治体へのステップを検証します。
- プロフィール
行政情報研究所 所長
諸橋 昭夫1946年生まれ。内田洋行勤務時代より一貫して地方行政の情報化に携わる。1999年行政情報研究所所長。行政情報化推進アドバイザー、ITアドバイザーとして全国で講演活動中。著書に「電子自治体へのアプローチ」など。
電子自治体に必要な5つの要素

行政情報研究所 所長
諸橋 昭夫 様
戦後57年に及ぶ地方自治は、“紙による手続き”を前提とした地域住民への行政サービスを提供してきた歴史があります。1960年以降の地方自治の情報化は、電算化・OA化・情報化・IT化など様々な呼ばれ方をされてきました。しかし現在を含め、どの時代においても、組織・庁内に閉じた行政システムであり続けました。地方自治を構成する団体自治に向けたシステムであり、住民自治へ向けたシステムは存在しなかったといえるでしょう。地域住民・企業から見て、情報化の恩恵を享受できるシステムは存在しなかったということでもあります。
地方分権一括法が施行されて3年が経過しました。分権社会といわれて久しくなりますが、地方自治体自身が自立することを問われたのがこの3年でありました。情報化・IT化は、この時代背景を基本においた戦略を立てるべきであり、民間における“ITを活用した戦略”と同じ目線になる必要があります。21世紀初頭が、地方自治における“新たな戦国の時代”といわれる所以でもあります。顧客としての地域住民・企業への情報化武装・サービスが必要な時代であり、さらにはパートナーとしての地域住民・企業への情報化戦略が求められている時代でもあります。 オープンな情報環境を提供する“電子自治体”実現には、以下の5つの要素が必要です(図参照)。
- 通信インフラとしての『インターネット及び総合行政ネットワーク(LGWAN)』
- 技術インフラとしての電子認証・電子公証・電子納付(決済)・電子データ交換・セキュリティーなど『アプリケーション(AP)基盤』
- 「LGWAN」・「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」など『他団体とのネットワークシステム』の整備
- 地方行政の事務効率向上へ向けた『庁内情報共有環境整備』など
- 行政サービスの向上策としての、新たな『行政窓口サービス事務のIT化』
“一つの”行政情報の共有化を図る
一般的にシステム化、情報化という時には、二つの軸からのアプローチが考えられます。X軸にはプロセスの自動化を、Y軸には情報の共有化を定義します。行政の情報化という世界に置き換えると、プロセスの自動化は、“行政サービスの高度化”といい換えることができます。情報の共有化は、まさしく“行政事務効率の高度化”そのものです。
過去、国・地方自治体という行政間においては、『情報の共有』というシステム化アプローチはとられませんでした。組織内の効率化という目標を掲げても、この情報の共有化というアプローチにメスを入れないことには、現状制度(組織・機構)を前提での単なる事務の効率化アプローチだけとなります。このシステム化アプローチには改革という発想が欠如している訳であります。
行政の情報化を考えるにあたり、構造・機構改革(リストラクチャリング)と一体化した戦略的IT活用によってのみ、情報化投資の効果が享受できることが理解されてきました。行政改革、行政内部の改革のIT活用の一手段が情報の共有化でもあります。 共有化のパートナーには、[1] 国民・地域住民との情報共有、[2] 国・政府及び他団体との情報共有、[3] 庁内の情報共有及び職員間の情報共有が考えられます。庁内職員間での情報共有が実現できた暁に、庁内全体での共有化環境([3])が出来上がります。その上で、他団体との情報共有([2])が可能であり、霞ヶ関WANとの共有環境整備が可能となるでしょう。“一つの”行政情報の共有化が完成するわけであります。ここに、LGWANの世界が存在してきます。
国民・地域住民との情報共有化は、別の課題(新たな“行政窓口事務のIT化”)として検討する必要があります。電子自治体の究極には、この国民・住民との情報共有環境整備が大きな課題であることは認識する必要がありそうです。
地域住民に対する10の電子化による行政サービス
地域住民は、顧客でありパートナーでもあり、戦略的IT活用を前提とした電子自治体は、国民すべてが享受できるIT社会となることが期待されています。地域住民への行政サービスには、住基ネットを含めて次の10の電子化が考えられます。
- 「各種申請受付」(電子申請・届出)
- 「公文書(証明書等)交付」(電子交付)
- 「手数料など納付・決済」(電子納付・電子決済)
- 「税の申告・納税」(電子申告・電子納付・電子交付)
- 「入札・調達手続き」(電子入札・電子調達・電子決済)
- 「公共施設の案内・予約」(電子案内・予約)、「図書館の蔵書検索・予約」(電子検索・予約)
- 「行政文書の案内・検索及び請求手続き」(電子公開、電子請求・電子納付)
- 「行政情報の提供・広報」(電子広報・提供)
- 「公聴・パブリックコメント及び相談」(電子公聴・相談)
さらには、その他多くのサービスの電子化が考えられます。各個別サービス事務ごとに1~3の電子的手続きが組み合わせられ、ワンストップサービスの構築へ発展するでしょう。住基ネットも、電子申請や電子交付そしてバックエンド(データベース管理システム)としての個別事務処理の組み合わせのシステムで構成されています。
今回「行政手続きオンライン化3法案」が可決・公布されたことにより、平成15年2月3日以降は、大きく変わることになります。2001年4月から施行されている「電子署名・認証法」とLGWANの機能・役割の一つである「組織認証基盤」がそれを可能とします。
納税通知書はもとより、広報関係、教育委員会や選挙管理委員会などの文書もすべて電子化が可能となります。現実にはすぐに実現はしませんが、電子化に向けての環境は2003年度中にすべて整うことになりそうです。そして2004年の当初課税からは、納税通知書の電子化も可能となるでしょう。
証明書発行だけでなく、各市町村のコンピューター上でバッチ処理を行っている公的文書も電子化が可能となります。現在、役所の書類には「上記は原本と相違ないことを証する」という首長の印が押されていますが、これらもコンピューターでアウトプットされた電子文書に首長が電子署名をすることになります。それによって真正な公的文書であることが証明され、書類が電子的に国民に送られることになります(電子交付という)。
IT社会実現には、電子政府・電子自治体実現が欠かせません。許認可権を持つ行政の情報化特に“公文書の電子化”の世界の実現が、日本経済のIT化に寄与することは間違いないようです。“行政の情報化の遅延は、企業・国民の高度化の推進を阻害する要因”であることを認識することが重要であります。“申請の電子化(電子申請)”と“公文書の電子化(電子交付)”の実現が、ビジネスの世界と行政の世界をシームレスに繋ぐこととなります。日本経済の全体最適環境へのパラダイムシフトが“期待されるIT社会”です。
- ※本ページに記載されている情報は掲載時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。










