対談・座談会
対談・座談会
物流を視点とした経営改革と差別化を加速する物流ソリューション

ビジネスのグローバル化、継続したコストダウン要求、燃料コスト上昇圧力などによって、物流は大きく変貌している。
無理・無駄を排除して経営体力を強化し、顧客満足度をいかに高めて生き残るのか。
株式会社日本ロジファクトリーの青木正一社長、NECソフトで物流ソリューションを推進している稲川国明と伊藤雅次とで、物流の抱える課題とそれを解決する情報システムの活用などを語りあった。
- プロフィール
青木 正一 AOKI SHOICHI
1964年11月13日生まれ。学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。
稲川 国明 INAGAWA KUNIAKI
1963年7月4日生まれ。1986年日本電気ソフトウェア株式会社(現NECソフト株式会社)入社。入社以来20年間、航空貨物業種向けのシステム開発に従事。国際物流を中心に、貨物トレース・通関システムなどの業務システム開発を展開した実績を持つ。現在、物流業種向けの幅広いソリューションを企画・展開中。
伊藤 雅次 ITO MASATSUGU
1962年3月16日生まれ。1985年日本電気ソフトウェア株式会社入社(現NECソフト株式会社)。全国の医薬品製造業、医薬品卸売業の物流システム設計/開発を経て、1998年からNEC業種事業部にて、物流ソリューションの体系化を実施。2000年にNECソフトに復帰。現在、主に、物流システム提案・物流業務改善コンサルテーション・WMS-PKG企画を担当。
大きく変貌するロジスティクス
青木:
今、物流業界には大きく3つの課題があります。第一は人材育成。物流担当者の教育は、営業や生産などより後回しになっています。大手物流企業でも、一過性の研修だけで、実務的、体系的な研修ができていません。
第二がITについて。これには、システムそのものと投資負担の問題とがあります。まずシステムに関しては、精度アップとコストダウンを視野に入れなければなりません。物流はITとマテハン(人)の融合だと思いますが、一時マテハンが先行したりITが先行したりしていました。再度原点に立ち返って、オペレーション側の立場に立ったシステムが必要です。例えば入出庫システムは、在庫の精度アップを考えると導入せざるを得ないはずなのですが、在庫差異が出るなどの問題に関してはなかなか投資に踏み切れないのが実状です。そういう意味で、できるだけ使いやすくかつ低コストのシステムが必要です。RFIDもそうですが、まだまだコストが高い。
次に投資負担の問題です。基本的には荷主企業が投資を行っていますが、それでいいのかということです。今、物流業者は生き残りをかけて必死に営業していく中で、情報システムを軸にした提案営業や現場改善など、付加価値の高い業務を行うことで新たな価値を生み出せると思うのです。入出庫システムへの投資で考えると、物流業者が入出庫をやって在庫差異が出たら、在庫差異のペナルティを払うコストと、入出庫情報システムを入れたときのコストを考えると十分ペイするはずです。
第三は、物流に携わる人たちが井の中の蛙になっていることです。これからの物流マンは、陸海空の物流の組立ができなければいけません。年商10億円に満たないメーカーでも、中国、東南アジアから原材料を輸入しているのですから、物流企業の物流マンもしくは荷主企業の責任者は、陸海空の物流の仕組みを総合できることが必要だと思います。稲川:
私は物流業専門ですが、荷主の求めていることは一点、「早くモノが欲しい」ということです。どこのメーカーも、部品をいかに早く調達するか、製品をいかに早く出荷するかに着目しています。そういった意味では、国際・国内の処理を含めて企業の物流処理は限界にきていると思います。それは、物流のアウトソーシングを見ればわかります。
国際物流に関しては、生産拠点が国外へシフトしているため景気が向上しており、コスト的にも十分に採算がとれます。今まで輸送に何日もかかっていましたが、改善できる余地がまだ十分にあると思います。一方、残念ながら国内物流については、原油価格が上がっていることもあり、輸送に関しての利益確保は難しく、ロジスティクス(倉庫)部分に転換している傾向があります。特に中堅以上の物流業企業は、ロジスティクス事業を核に展開し始めています。
そういった意味で物流企業にとって、国内物流のコストダウン、輸配送のサービスアップ、情報戦略が課題となります。荷主に対して情報をどう提供していくか、どんな情報をもらって効率化していくのかなど、情報のレベルアップを図る必要があります。伊藤:
私は企業内の物流を担当していますが、一番の問題は在庫圧縮です。例えば出荷頻度のABC分析をすると、医薬品では全品目数の上位約10%で全出荷行数の約70%を占め、一方下位を見ると、月に1回未満の出荷品目数が、全品目数の3分の1から半分もあります。これら下位の商品は在庫せず、受注してから発注するという形で在庫を圧縮してもいいと思うのです。また、倉庫作業で一番無駄なのは、作業員がピッキングする棚へ移動する時間です。たぶん、作業自体の 8~9割くらいはこの移動時間だと思います。その無駄をどうやって省いていくか、どういう倉庫内レイアウトをするのかも課題です。変化はチャンス、「走らない物流会社」を目指せ
青木:
今まで物流は、経営活動の後処理という捉え方でした。しかしこれからは、物流は仕入、購買、生産と同列、もしくは同列以上に位置づける必要があります。物流が強い企業は企業体質も強い。逆に企業体質が強いと物流が強いかというと、それはノーです。物流を経営活動と捉え、物流改革はトップダウンで行わなければいけません。今までのように現場改善で物流が変わる時代ではない。例えば、物流をアウトソーシングすると、雇用の問題、人事政策まで入ってくる。物流改善だけでは部分最適にはなっても全体最適になりません。経営活動の一環として、また経営コストの一部として物流コストを見るという視点が必要です。
5月で軽油価格が一斉に上がりました。人件費はかかる、人手は不足する、燃料は高騰すると、物流企業では走れば走るほど儲からない状態です。だから、物流業はトラックや倉庫を持っているハード産業ではなく、ソフト産業に変わりつつあると思います。倉庫で保管もできる、システムのオンラインもできるといった中で、トラックが走るという位置づけにしないと成り立ちません。物流業の仕事の幅があればあるほど、コストの調整ができるからです。これからは、「走らない物流会社」を目指す必要があるのではないでしょうか。稲川:
荷物を輸送するという点では、大手の物流企業がどうしても優位になります。大手以外が生き残っていくには差別化しかありません。荷主密着型のいわゆる情報戦略や、荷主側に踏み込んだ部分をサービスとして確立することが、差別化の根本だろうと思います。例えば、受発注の代行を含めて、出荷にかかわる作業をサービスとして提供していくなどが挙げられます。物流企業がソフト産業ということはまさにその通りです。トラックを持たない物流業者、ロジスティクスのプロバイダーは少なくありません。社員はモノを運ばず、下請け業者に委託するなどして物流全般のコーディネートを行っています。完全に物流業がソフト産業に変わっているというような変革です。これは大手の物流企業に対してインフラでは勝てないという判断を下した結果だろうと思っています。伊藤:
ちょっと視点は変わりますが、生産拠点が中国を代表とする安価なアジア各国に行き、販売に関してもEDIやWebがますます進む中で、企業の業務で最後に日本国内に残るのは物流だと考えています。ですから、これからの企業は物流の効率化を中心に考えていく必要があると思います。
物流の視点で企業を変革する
青木:
営業のスタイルもWebに変化しつつあるように、生産の形も変わってきています。企業活動の力点を物流に置き始めると、非常に面白いものになる。 10年間、170社弱の物流改善をさせていただいた中で共通しているのは、物流を改善すると、必ず営業、生産、購買、情報システムの問題が浮き上がることです。経営課題のあぶり出しみたいなものが物流を通じてできる。それは、物流が経営の諸活動の後工程だからです。稲川:
現在、物流業の中でのBPRが進んできていると思います。荷物を運ぶのが主要な業務であるにもかかわらず、実際に業務を分析すると、業務を遂行するための指示書を記述するなど、紙による指示業務が多く目立ちます。物流の受注をする人間と実際のハンドリングをする人間の機能分担を行うなど、機能単位での組織編成を実施している物流企業が多くなっています。その土台は何かといったら、やはりコンピューターです。今までは隣にいる人に対しても指示書を発行していましたが、コンピューターの仕組みの中でこういった部分を改善しています。BPRの土台としてシステム作りがキーワードになってくると思います。伊藤:
そこで余った人員を新しいビジネス展開に従事させる、または物流業者との役割分担を見直していく必要があるのではないでしょうか。単純な目先の業務効率化に止まらず、業界全体を見据えた、中長期的な物流改善構想立案が必要だと思います。どこから物流改善を行えばいいのか
稲川:
物流改善は、無駄を排除することから始まります。人の流れを含めて業務を分析し、上流から下流までの一貫した業務の流れを体系化することが必要です。しかし、一度に全体の最適化を行うことは困難なので、お客さまが抱えている一番の課題を解決するというソリューションが必要です。そこで今回作ったNECソフトの物流ソリューションメニューには、全体最適化を行うソリューションだけではなく、個別の課題を解決するソリューションも準備しています。青木:
現場サイドの経験からいうと、物流改善は物流業務を可視化していくところから始まると思います。物流業務を数値化し、支払物流費、車両原価計算などのトータル物流コストを出す。今まではトータル物流コスト算出に関して、経理上の勘定科目で物流の判断をしていましたが、人件費の中にも物流に携わる人たちのコストが入っています。それらも含めてコストを算出して、業務を数値化し可視化していく。物流業に携わる人たちがもう少し物流を数字で表すことができたら、もっと変わってくるだろうと思います。伊藤:
同じように倉庫内でも物流コストをきちんと算出する仕組みを考えています。広いセンターの中には様々なマテハン機器や人手による作業などがありますが、一定の法則でトータル物流コストをこれらに配賦して個々の物流コストや生産性をカウントする。この仕組みを作業員にやらせてしまうとうまくいかないので、例えば無線ハンディを使ったときの作業開始時間、終了時間を自動的に実績に取り込んで、そこからコストを割り出すという仕組みを入れ込んで提供しています。どこまで物流改善に投資したらいいのか
稲川:
一般的なデータでいうと、企業全体売上の2%が年内システム投資額の限界だろうと思います。大手企業でも5%くらいでしょう。それができる会社とできない会社、企業母体の収益率をある程度見極めて投資の提案をしないと、間違いなく絵に描いた餅になります。そういった意味で全体の最適化を目指してシステムを提案したいのですが、ユーザーに「ここの部分から導入しましょう」と言っていただけるアプローチが必要だと考えています。青木:
物流に対する投資というものについて、応えられる企業や計画的に行っているという企業は、本当に一握りです。残念ながら多くの企業は、無理、無駄、無茶の部分にメスを入れるだけで十分コストダウンや収益につながるはずです。物流は投資のカテゴリーに入っていない。しかし、実際には採用や生産設備投資、不動産投資の中に入っていて、実は投資しているかもしれないのです。物流投資だけ抜き出すのは難しい状況です。無理、無駄、無茶をなくすだけで、コストダウンと企業のオペレーションはよくなっていくと思います。稲川:
今回の物流ソリューションでは、物流の中身を切り口として陸運、航空、庫内物流のWMS(Warehouse Management Solution:倉庫管理ソリューション)の3つに整理しました。その中で特に注目していただきたいのはソリューションの定義です。何が問題で、何を解決して、効果はどうなのかという3段論法的なものですべて組み立てています。それが今までのパッケージビジネスからの変革です。ただ、航空物流は基本的にはパッケージやテンプレートがベースとしてあり、導入してすぐに動くものを準備しています。陸運業に対しても同様です。基本的にはソリューションの後ろには必ず動くパッケージラインがあります。伊藤:
NECソフトの物流ソリューションの強みは、業種、業務をよく知っているということに加えて、可視化分析から入る点です。お客さまの一つの業務の中で無駄はどこにあるかということを3Dのシミュレーション、もしくは数値化してお見せします。無駄をなくすためには、こういう仕組みをご提供できるといった提案の仕方をさせていただいています。青木:
やはり物流というローテクの部分については、情報システムをうまく駆使しなければ、さらに大きな改善、改革はできません。それから、今後の物流マンは世の中に関心がなくてはならない。グローバルな視点で、陸海空、陸でもJRコンテナを駆使しながら見ていて欲しい。それから、ランク別にレベル設定をすることです。遅くてもいい商品と早く送らなくてはいけない商品など、もう少しカテゴリーを細分化して物流レベルの設定にメリハリをつけたほうが無駄なコストも払わなくて済むし、物流業の負担も減る。何でもかんでもリードタイム、翌日ではないはずです。商品や得意先によって物流レベルの設定を変えていくことで、企業体質に合った物流システム、物流の仕組みを作れると思います。稲川:
私は物流業界が変わるのは、グローバルな感覚を持つか持たないかによると思います。これからは海外でもどんどんモノの流れが増えてくるはずです。日本の中でモノを管理するのとはまったく違う視点や発想で、欧米の物流企業が間違いなく出現してくると考えています。恐らくその瞬間に、日本の物流業界は大きな影響を受けます。ですから、もっと大きなグローバルな視点で、モノの流れを捉えられるように生まれ変わる必要があるのです。
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