対談・座談会
対談・座談会
世界最先端のネットワーク活用で企業の枠を超えたコラボレーションビジネスを推進
ますます高速化するネットワークによって、“リアルタイム”で“ユビキタス”な業務サービスの提供が可能になり、大きなビジネスチャンスが生まれる。これを活かすのが、社内外の情報共有とナレッジを活用したコラボレーションビジネスだ。世界最先端のネットワークを活用していかにコラボレーションを実現するのか。YRP研究開発推進協会の甕 昭男 会長、NECソフトのネットワーク担当である西川 満と佐藤 克とで語りあった。
- プロフィール
甕 昭男 MOTAI AKIO
YRP研究開発推進協会会長。(財)テレコムエンジニアリングセンター理事長、中央コリドー高速通信実験プロジェクト推進協議会副会長、1968年郵政省入省、1987年郵政省技術開発企画課長その後移動通信課長、計画課長を歴任、1993年郵政省電波部長、1996年大臣官房技術総括審議官、 1999年放送大学学園理事、2000年横須賀リサーチパーク推進協議会会長兼務、2002年テレビ朝日取締役、2004年テレビ朝日常務取締役、 2006年9月現職。
西川 満 NISHIGAWA MITSURU
NECソフト株式会社UNシステム事業部ネットワークセキュリティグループシニアプロジェクトマネージャー。1983年日本電気ソフトウェア株式会社(現NECソフト株式会社)入社、通信アプリケーションの開発を経て、ネットワーク構築SI業務に従事、1999年ビジネスソリューション事業部ネットワークSI部技術マネージャー、ネットワークセキュリティを中心とした構築SI業務に従事、2006年現職。
佐藤 克 SATO MASARU
NECソフト株式会社UNシステム事業部新規事業開拓グループグループマネージャー。1979年日本電気ソフトウェア株式会社(現NECソフト株式会社)入社、OS/トランザクションシステムの基盤開発を経て1992年技術課長(NEC出向)として銀行システムなどの設計に従事。 2001年現職にて携帯電話キャリア様基盤システム構築、基盤システム提案に従事。
世界一のネットワーク先進国=日本
甕:
最近の日本は、ネットワーク、コンテンツ、端末それぞれのジャンルにおいて、将来のICT(Information and CommunicationTechnology)が「ユビキタス」という大きな流れの中で非常にうまく発展しているように思います。こうした流れが日本の社会、経済、産業の中にどんどん根ざしていくことが重要です。その根幹は、やはり研究開発、技術開発であり、そのベースがきちんと動いている限り、グローバル的に見て、日本にとって大きなビジネスチャンスではないかと思います。この12月1日、全国県庁所在地すべてでデジタル放送が開始されましたが、デジタル放送は今までのアナログ放送にはない3つの大きな特色を備えています。ハイビジョン、データ放送、ワンセグのような携帯向け放送がすべて可能になり、ここに通信との融合という問題が出てくるわけです。放送界はテレビ放送始まって以来の大革命期に入っているといっていいでしょう。大きなビジネスチャンスです。放送界として一番重要なのはコンテンツですから、それをいかに充実させていくか。特にアーカイブの重要性はますますこれから高まっていくだろうと思います。
西川:
ネットワーク側から見れば、非常に膨大なコンテンツの中から利用者が欲しいものを選択して見るために最も要求されるのはやはり高帯域です。現状のインフラではまだそこに到達するには道のりが長そうです。ワイヤレスの世界もどんどん高速化していますので、さらに高帯域が進めば、どこからでも見たいコンテンツを見ることができる環境を実現できます。そういった中、最近、ストリーミングの世界では「インフラただ乗り論」が出てきています。今までのようにデータとして扱っていたのと、放送のような形で非常に多くの人を対象に視聴させるのでは、ちょっと異質だというわけです。その辺をうまく融合させていければ理想的なのですが。このあたり、放送界にいた経験からどうお考えですか。甕:
システム的にいうと、ネットワークあるいはメディアは大きく3つに分かれます。1つは光ファイバーを中心にした有線系の高速ネットワーク、2つめは日本が世界トップを誇る3G(第3世代携帯)です。これはメガオーダーの映像を送れる、いわゆる動画が携帯電話で見られるということです。3つめがデジタル放送です。この3つのメディアが同時並行的に先端を走っている国は日本しかありません。そこで、この3つをいかに使っていくかが大きなポイントになります。これからは、そこに載せるコンテンツの問題が重要になってくる。供給する側と使う側がお互いにうまく連携、融合しながら、育てていくということが重要でしょうね。西川:
今まではサービス提供者と利用者の間でしかビジネスモデルが成立していませんでした。しかし、これからは放送のような大きなデータをやりとりすることになりますから、インフラ提供側としては違和感を覚える部分があるかも知れませんが、今後は三者間でビジネスモデルがうまく成立すれば、関係者に受益があり非常に広がりが出てくるでしょう。YouTubeなどの盛況ぶりをみると、ストリーミングのコンテンツを流通させる力は非常に大きいようですね。著作権をどうクリアするかが問題ですが。あとは企業が持っているビジネスコンテンツをいかに企業活動の中に生かしていけるかが大きな課題になりそうです。甕:
そうですね、ブロードバンド機能を利用すれば、小さな企業でも放送的なサービスを行えます。極端なことを言えば、個人でも放送に近いことができる状況になったわけですから、皆さんに「作る立場」「作り手の視線」で参加していただけると良いですね。そうやってコンテンツマインドをうまく育てていくことが非常に重要です。どんどんスピード化が進みますから、ピーク時のスピードも十分に吸収できるようなネットワーク基幹体制をきっちりと運用していかなければなりません。ユーザーレベルも、ギガビットオーダーの利用の仕方がどんどん出てきていますので、IPベースはいいのですが、セキュリティをきちんとしないといけません。これからのインフラを考える上では、基本的なNGN(Next Generation Network)構想が非常に重要になってくると思います。NGN時代はコラボレーションビジネスが不可欠
佐藤:
NGNといった場合にもいろいろな観点があります。バンド幅が広がるという観点もあれば、IPリーチャブル、外からアクセス可能な装置自体が増加するという観点もある。家電のIP化が進めば対象となる機器も増えるわけです。元々は企業のビジネスネットワークの中でしかつながっていなかったものが、一般家庭のPCがつながるようになり、今度はテレビがつながるようになり、その先もどんどん接続するものが増えていくでしょう。西川:
企業におけるNGNの活用のスタートはやはりIP電話によるコストダウンです。そして企業の中でのWANの部分(IP-VPN、広域 Ethernet)が、NGNを使ったWANになれば当然コストが下がります。それによって安心なサービスを企業の中に取り込みたいというのが、企業の期待だと思います。その次にくるものは、NGNが提供してくれるセキュリティのサービスではないかとみています。放送のようなものをよりストレスなく受けられることによって、例えばeラーニングに映像を駆使してよりわかりやすいコンテンツとし、企業の中に浸透させていく。動画は受けるインパクトが大きいですから、ラーニング効果が拡大するのではないかと考えています。佐藤:
eラーニングは社内に向かっているだけではなくて、それをビジネス化する動きも確実になっています。到達できる人間の数が増えることで、そこに向けるビジネスがおそらく進むでしょう。そろそろ体系が整ってきたので、データのセンター管理も始まりそうです。西川:
企業が成長する上で、ラーニングのコンテンツをいかに簡単に少ないコストで作れるかといったところの基盤整備も当然必要ですね。そういったものはNGNのサービスの中で提供していくことが可能だと思います。甕:
「融合」という言葉がNGN時代のキーワードかもしれません。通信放送融合、移動固定融合、ソフトハード融合。そういう意味で、これからは総合家電メーカーが強くなるのではないかと感じます。一般家庭であらゆる家電が情報化、ネットワーク化すれば、メーカー側もあらゆることを扱っていないと対応ができませんから、総合家電メーカーが有利です。通信機器だけをやっているメーカーの従業員は、家電の知識を取り入れる必要が出てくるでしょうが、通常の業務をこなしながらそのつど学ばないと変化に追いつけない。そこで有効活用したいのがやはりeラーニングです。また融合時代では、これからの企業はアライアンスが不可欠になってきます。1社ですべてをできるわけがないですから。例えば、放送界と通信界は連携しないとやっていけませんし、メーカーも同じことです。誰とアライアンスを組めるかによって「何ができるか」という時代に入ってくる。アライアンスの過程そのものが得難い情報交換の機会ともいえます。高速ネットワークを使えば、遠方に足を運ぶことなく、テレビ会議などでも十分にコミュニケーションがとれます。そのアライアンスの密度をサポートするのが高速ネットワークの役割だと思います。
そして、NGNを利用する企業では、いかにネットワークと情報を駆使しながら、自分のビジネスのスピードを上げていくか、品質を高めていくかということだと思います。これは、持ち場持ち場の情報ニーズにもつながる部分です。とにかく食いついてみないとわからないところがあるので、まずは果敢に触ってチャレンジしてもらうしかない。その実感からビジネスにつながるアイデアやチャンスが生まれる気がします。そのいい例がコールセンターの地方化、アウトソーシング化です。現在、アメリカの開発とメンテナンスはかなりの部分をインドのアウトソーシングで賄っていますが、人数を増やさなくてもアウトソーシングで同じ効果を狙うことができるのが通信のメリットで、ICTがこれからいろいろな効果を持つ可能性があるということです。
佐藤:
距離をゼロにするのが通信の最初の一歩です。例えば日本のメインフレームのコールセンターをブラジルに置くと、日本が夜中のときに向こうが昼なので、 24時間サービスが簡単にできてしまう。回線をつないで、その距離をゼロにするだけでなく、逆にメリットにもできるというのは面白い現実です。西川:
そういう意味では、今まで以上にいろんなサービスがNGNを通して企業側に提供されるようになると思います。自前で設備を持つと導入コストがネックになりますが、サービスとして利用できれば今までと同じコストでより多くのものを得ることができる。そうやって企業が必要なものを選択できる環境が整ってくるでしょう。
求められるICTマインドの育成や法整備
佐藤:
NGNではネットワークに係わる人間も増えます。プロからマニア、そして一般家庭へと接続人員が急増する。「教育」や「法の整備」を本気でやらないと大変なことになりそうです。車に例えると、今まではプロばかりのサーキットだったので信号も不要だったところが、一般道路化したために信号や十分な数の警察官、法律が必要になるということです。とにかく、法整備と教育は急務です。私はインターネット接続免許が必要だと思います。でないと危なくてしょうがない。逆に言うと、教育がビジネスになるとも考えています。セキュリティはすでにビジネスですし、あとはすべてのものをセンターから管理するシステムなど、いろいろなことができます。どこでも仕事ができるのは非常に良いことですが、情報漏えい問題が企業のIT化の足を引っ張っていますね。データを電子化すると情報漏えいのリスクがどうしても増えてしまうので、がちがちにガードをかける。そのせいで電子化した意味がだいぶ薄れてしまうのですが、センター管理にすればだいぶ楽になります。NGN時代になるとその傾向は一層顕著になるでしょう。今までは外側に鍵をかけることで守ってきたけれど、もうそういう世界ではなくなる。倉庫にまとめて保管することになるはずですから門番がいないとダメですね。
西川:
そういう意味では、本当に誰でも安易に使えるのがインターネットです。インターネットは、これまでの形のまま多分残ると思いますが、一方、NGNというのは誰でもつながっていいけれども、つなげるためにはルールを守って、管理された中で、より安心、安全にネットワークを使っていくという考え方が必要です。当然、それをゲートウェイするところがありますが、各々が自由奔放に使いたいのか、ビジネスライクに何か目的を持って使いたいのか、この辺りを利用者側が選択していくことになるでしょう。甕:
ICTが発展したのは戦後でまだ60年くらいしか経っていませんから、人間との親和性の問題があるわけです。アナログは人間との親和性が高く、ラジオもテレビも家の中で触りながら学習できるものでした。しかしコンピューターは事前に勉強しないと使えません。ブロードバンドも簡単に望みの画面に到達できませんし、テレビやビデオのリモコンですら全部使いこなせる人が何人いるのかわからない。技術的には素晴らしいし、コンテンツも山のようにある。しかし、それをどういう形で使いこなせるか。ユーザーがこれからICTをいかに享受できるかは、そのベースとしてかなり教育的なことが必要になってくると思います。技術的な教育というよりも、むしろICTマインドを育てる必要性があるでしょう。セキュリティ関係や著作権の問題など、倫理的なものをきちんとやることが本当に大切です。今後、ネットワークがどんどん高速化されていくことは確かです。これからギガビット、テラビット、企業内情報も相当なスピードでどんどん回っていく。高速ネットワークをどういう形で使うか。これは、まさしくアーカイブ、データベースと関係があります。そのとき「いかに早く自分の欲しい情報を取り出すことができるか」が世界的な競争になるでしょう。情報を早く入手できれば、開発もスピーディにできるし、資金運用の面でもメリットが大きい。
あとは自分の画面でどういう操作ができるかという操作能力の問題と、それをバックアップするソフトがどういう形でできてくるかということになる。その操作も、これからは車の中で、あるいは携帯電話を使ってと、あらゆる場面で自分の本当に欲しい情報と与えたい情報の流れをどういう形で操作できるかが問われます。操作能力、ソフト、そしてロボット化がどうなっていくか。容量的にはいくらでも大きなことができますから、やはりユーザーがどういう風に使えるかがポイントになってくると思います。
西川:
ボーダーなインターネット上の情報を自分で見ようと思えば、検索サイトでキーワードを入れることによって、欲しい情報を瞬時に引き出すことができるわけですが、それはあくまでも自分が操作して引き出しているわけです。しかし、自分の代わりに膨大な情報を整理して引き出し、ピンポイントで見せてくれるインターフェースが今後出てくるかもしれません。ネットワークを人間の体中に張り巡らされた血管に例えると、稼働しながら悪い部分を叩いたり修復したりする白血球や血小板のような役割を担う技術が出てくれば、夢のある良いネットワーク社会が出来上がると思います。NGNのバックボーン上に載ったサービスを提供
甕:
今、ものすごいスピードでアジアの国が動き始めています。ICTの軸足も欧米からアジアに移ろうとしています。これは技術的というよりもマーケットの面ですが、今後は、韓国、台湾、ASEAN、インドと、どういうアライアンスが組めるかが非常に重要になります。ソフト開発でも、中国やインド、それから ASEANのソフト人材をいかに使うか。そこに日本の発展がかかっているのです。逆の意味でいえば、中国、インド、台湾、韓国は、日本を本気で狙ってきているわけです。日本は市場としても技術国としてもおいしい国ですから、日本に学んで一刻も早くキャッチアップしたい。そのスピードは、日本人が考えている以上に早い。こうした流れは、相当大きなものになりつつあります。それに比べ、日本の事業者はGDP500兆円の日本市場に満足しすぎて外のおつきあいが余りに薄いのではないかと感じています。この市場の中だけで満足していたらもうダメだと思います。アジアとの連携からするとだんだん相対的な地盤沈下を起こしかねない状況です。この辺りの事情について、ソフト会社の方はきちんと見極めて対応してもらいたい。
今後は、よくいわれている民の活力、創造力、自由度が非常に重要になると思いますし、そのためにはたゆまない研究開発が不可欠です。日本は今、 ICTの分野でも世界トップの位置にありますが、追い越される立場になったら情報も人材もぱったりと来なくなります。スピードの世界ですから、あっという間に他の国に抜かれてしまう。研究開発には相当な資金と人材を投入して、無理をしてでもやっていただきたいと思います。
西川:
NECソフトの取り組みとしては、NGNのバックボーンを提供するというよりは、バックボーンの上に載ったセキュリティサービスなど、いろんな企業様に対してコストパフォーマンスの良いサービスを提供するところで、今後ソリューションを出していきたいと思っています。佐藤:
ICTは今、最初の山を越え、技術的にもっと革新を進めていく二山めに来たように思います。一般の方がものを使う場合、2番目の山が来たときに1番目の山を使うのが正解だというのが私の持論なのですが、その意味では今、一般、中小企業の方にとって、ICTは使える技術として成熟したときにあるといえます。チャレンジしても大きな失敗はない時期にきていますので、ぜひ活用してください。
- ※本ページに記載されている情報は掲載時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。


