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真の顧客視点に立ち企業価値創造のためのナレッジマネジメントを

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ナレッジネットワーク株式会社 代表取締役森戸裕一、NECソフト株式会社 生産技術部 部長齋藤愼司

ナレッジマネジメントという言葉が叫ばれるようになってから、10 年の月日が流れた。その間に、企業とそれを取り巻く環境は大きく変化し、ナレッジマネジメントという言葉が持つ意味も変わりつつある。社内の情報を蓄積するだけのシステムではなく、価値創造のナレッジマネジメントへ−この流れは、現在企業の中で起こりつつある情報共有の新たな潮流とも言える。ナレッジネットワーク株式会社 代表取締役 森戸 裕一氏とNECソフト株式会社 生産技術部 部長 齋藤 愼司が新たなナレッジマネジメントの可能性について語り合った。

プロフィール

森戸 裕一

大手システム会社でナレッジマネジメントなどのコンサルタントとして活躍した後2002 年1月独立。ナレッジネットワーク株式会社を設立後は組織力向上のための情報マネジメント、人材マネジメントなどのコンサルティング業務に従事。特に経営者や情報化担当者向けの講演などは独立後1500回と群を抜く実績を持つ。情報化による組織変革などのテーマで社内研修の講師や大学の客員教授なども務める。著書に『人と組織が動く中小企業のI T経営』がある。

齋藤 愼司

1977年8月 NECソフト入社 NCOS1のOS開発(操作管理)を担当し、コンソール制御、DBリカバリシステムの開発などに携わった。1986 年から官庁系大規模システム構築に従事。その後、2001年に現部署の前身であるSEFE推進部に転進し、経営品質活動の全社SPI活動推進を担当。2004 年 改称した生産技術部で、主にSIフレームワークを基盤とした開発方法論、開発/管理ツール、ノウハウなどの情報共有の全社推進に携わり、引き続き全社生産革新活動を推進中。

ナレッジマネジメントに欠かせない動機付けと目的の明確化

齋藤

NECソフトが自社内のナレッジマネジメントに取り組み始めたのは2000年の少し前ぐらいです。それまではノウハウや情報の蓄積は、グループや個人の域に留まっているレベルでした。当時、社長の肝煎りで、企業の価値創造をどう行うかという議論が社内で始まっていたのですが、その時に若手の技術者が集まった検討会の中から、社内のナレッジをマネジメントすべきだという提案が上がってきました。そして、会社としてナレッジを蓄積し活用する仕組みとして全社規模のナレッジマネジメントシステムを作り、バラバラになっていた知識を組織的にまとめていこうということになったのです。弊社では現在、「KnowledgeWorld」というナレッジマネジメントシステムをパッケージとしてお客さまに販売していますが、元々はこうした社内で実践的に活用したシステムから生まれたものです。

森戸

ナレッジマネジメントは元々、どの会社でも自然に行われていたことです。ITシステムがない時代には、マネージャーと呼ばれる方々が、部下の知識やノウハウをマネジメントしていました。しかし社会の情報化が加速し、企業にあるナレッジが膨大な量になってきて、その中で何が価値なのかということが判断できなくなってきました。そこでITシステムを使って、企業の中のナレッジを整理する必要があると考えられ始めたのが、私の認識ですとちょうど2000年前後です。ですからNECソフトは、ずいぶんと早い段階からナレッジマネジメントに取り組まれていたと思います。ただ、その分、相当の試行錯誤があったのではないでしょうか。

齋藤

システムを導入した最初の2~3年は、全社で登録キャンペーンなどを行い、活性化に努めた時期がありました。初めから、システムを作ればすぐに活用されるという状況ではありませんでした。ナレッジマネジメントの目的を社内で議論しながら、少しずつ社員に浸透させていったと思います。

森戸

私はナレッジマネジメントを実現するまでに必要な段階が二つあると考えています。最初に、一体何を目的としてナレッジマネジメントを行うのかということを全社に周知徹底しておかないといけません。“インフォメーションマネジメント”と呼んでいますが、これをしっかり行っていないと、ナレッジマネジメントの仕組みだけを作ってもただの箱になってしまいます。それから、次は“モチベーションマネジメント”によって、動機付けをしてあげる必要があると考えています。モチベーションマネジメントで一番分かりやすいのは、インセンティブですね。特にNECソフトのように大きな会社ですと、ノウハウを持っている方がその情報を共有するために、業務に影響が出るほど対応に追われるおそれもあると思います。その時に、会社としてその方にどのようなインセンティブを渡すのかということを最初の段階で告知して動機付けしておかないと、なかなかナレッジマネジメントは機能しないとも考えられます。インセンティブについては、どのような仕組みを取られたのでしょうか?

齋藤

確かにインセンティブというのは重要なことだと思いますし、実際ナレッジマネジメントの活性化のためにはインセンティブが必要なのではないかと、社内で議論したこともありました。促進を目的とした報奨金などのインセンティブに関しては、経営層の判断として、あくまで業務の一環としてナレッジマネジメントを行うのであって、インセンティブのために行っているわけではないという考え方から、結局弊社では導入には至りませんでした。ノウハウを蓄積していき、企業の存続に繋げるということは、企業人として当然果たすべきことなのだというのが、私どもの考えです。

森戸

なるほど、インセンティブをもらうためではなく、自分たちが価値創造のためにナレッジマネジメントを行うのだということを、社員の方々に徹底されたということですね。そうして社員の方の意識に動機付けがなされると、ナレッジマネジメントの行動にも繋がってきます。

重要なのは顧客視点で如何に情報共有を考えるか

齋藤

ナレッジマネジメントを行う上で、ルール作りとモチベーションは非常に大切であると考えます。弊社では、バランススコアカードを全社的に導入しており、ナレッジをどういう風に使っているかということに対して、お客さまの視点やプロセスの視点でKPI(業績評価指標)を設ける部門もできてきています。組織の価値を高めるための方向性を指標で評価していく仕組みも必要になってきます。

森戸

やはりお客さまの視点で考えることが重要ですね。ナレッジマネジメントと言いますと、ついつい内向きに、自分たちが持っている知識をどう溜めこんで、それをどうやって共有していくか、という話になりがちです。しかし、最終的にはお客さまに対して価値を提供するわけですので、お客さまにどんな価値を提供するために、自分たちはどんな知識を蓄積して活用しなくてはいけないのかを考えなければいけません。バランススコアカードの考え方は、その中に業務プロセスやお客さまの視点が入ってきますので、社員に対して非常に分かりやすい説明になると思います。最終的にこれは何をするためのシステムなのかということが明確になっていれば、現場の方にもシステムをポジティブに利用してもらえて、情報システムの活用は問題なく進むと思います。

齋藤

弊社の場合ですと、最初にお話しましたように、トップの指示がありましたが、若手の技術者が考えてボトムアップでナレッジマネジメントシステムを作り上げてきたという経緯があります。SIの会社ですので、企業価値を高めるためにノウハウを統合する方法が必要であるということをみんな認識していました。そのため、システムを導入する目的も社員が理解しており、展開も比較的スムーズに行うことができたと思います。

森戸

情報共有においては企業文化の分析という過程が絶対に必要となります。外資系の企業や同様の組織風土を持った企業であれば、中途入社であっても即座に社内のナレッジを活用して即戦力として結果を出していくことが求められます。そういった体質の企業の場合は、ドラスティックなナレッジマネジメントシステムがあればいいわけです。しかし日本の会社の多くはそういう仕組みになっていません。日本では、社内で人間関係を形成していって、その信頼関係の中でナレッジを交換し合う風土です。そこにナレッジマネジメントシステムを導入するには、その会社なりの工夫がないと上手くいきません。その分析をやるのが私たちコンサルタントの仕事です。結局、人間の仕事を定義しないとシステムは入りません。私たちはどうしてもシステムありきで考えてしまいがちですが、最終的には人間が何をやるのかというところに尽きると思います。

現場で求められる“どろどろした”暗黙知の共有

齋藤

最初は、業務効率化のためにナレッジを活用しようということで、QMS(品質マネジメントシステム)を構築したり、帳票や定例文などをナレッジマネジメントシステムに登録したりしていました。ただ、そういった形式知だけではなく、暗黙知も継承していかなければいけないという考え方が、現場の技術者から求められるようになりました。効率化だけでは競争の優位性を高めることはできないと考えています。現在はこうした暗黙知をどのように取り込んでいくかを模索している段階です。例えば社内で事例発表会を行うと、紙に書かれた文章では伝わらない、どこか“どろどろした部分”があり、そこが大事なところでもあります。その“どろどろした部分”は“face to face”でないと非常に伝わりにくいものです。現場も忙しいので、事例発表会に出席できない人も多いのですが、そういった人向けに発表会の様子を動画で提供したりしています。間接的であっても同じ立場の人には感覚的に伝わるものがあるのではないかと考えているからです。臨場感を共有し気付きを得て、現場改善に繋げて欲しいと思っています。

森戸

今おっしゃった“どろどろした部分”が、結局のところ現場のノウハウでありナレッジなのですね。そのナレッジはおそらく国内メーカーならではの暗黙知がある部分ではないでしょうか。そのナレッジを社内で共有できるようになってくると非常に面白いですね。その辺りがNECソフトのこれからの強みになってくると思います。形式知にできないのであれば、動画やノウフーという形で対処すればいい。どういった形で暗黙知を共有させるかという際に、リッチコンテンツを使うやり方は理にかなった手段だと思いますし、僕らも注目しているところです。

齋藤

対象をどこに置くか、価値をどこに見出してシステムを作っていくかということが非常に重要ですね。ナレッジにより企業価値を高め、やはりお客さまに価値を提供するためのシステムでなければ意味がないと考えています。

森戸

今はお客さまの方でもいろいろなツールを持っていますし、どんどん新しい情報を取り込んでいますので、NECソフトがこれは価値であると判断して提供されても、お客さまにそれを価値だと思ってもらえるかどうかが非常に難しくなってきています。インターネットの影響で、情報のサイクルがものすごく速くなっていて、お客さまの考える価値もどんどん変わっています。それに対して御社も合わせていかないといけません。そうなると、今度は社内だけではなく、社外のナレッジマネジメントも行っていかなければお客さまに追いつけないということになってしまいます。

齋藤

非常によく分かります。社外のナレッジを取り入れ、本当の価値をどうやってお客さまに提供していくか、そのスピードが必要だと思っています。これを実現可能にするものがナレッジマネジメントではないでしょうか。ナレッジをベースに人と人のコミュニケーションを活性化し、ナレッジを活用して行動に結び付けることが、新しい価値をお客さまに提供することを可能にしていくのではないかと考えています。

森戸

問題は外からの情報を誰が社内に取り入れるか、ということですね。営業部門とシステム部門が連携していかないと、お客さまのニーズに合ったシステムは作れません。ただ、スピードが速すぎて、営業でも追いつかなくなっています。お客さまが言っていることを社内で共有して、それで開発していっても、もう間に合わない時代になっています。ニーズを拾っているだけではスピードに付いていけません。ニーズより一歩先の潜在的なニーズを掴んで、社内に取り込んでいくような仕組みが必要です。社内と社外の接点となるナレッジマネージャーがこれからは必要になるのではないかと私は考えています。NECソフトの強みである日本人に合ったシステムと今まで脈々と培ってきたノウハウを、最新のウォンツとどう組み合わせていくかということが大切になってくるのではないでしょうか。

齋藤

おっしゃるとおりです。「KnowledgeWorld」にしてもパッケージとして販売している製品ですので、弊社の社内で培ったノウハウに加え、社外のユーザーニーズを取り入れながら進化させるようにしています。社内と社外の接点である営業やSEの感性を研ぎ澄まし、先取りした行動ができるように現場力を高めていかなければなりません。今後もより一層そういった部分でのマネジメントが、企業の競争力の維持には不可欠になってくると考えています。

森戸

結局のところ、現場に蓄積された情報をボトムアップでどうやってマネジメントするかというところの問題に繋がってくると思います。最近では雇用の流動化が激しくなったと言われていますが、それでもある程度の規模の会社では、従業員が長くその会社に留まることを前提に仕事や業務プロセスが作られています。システムは、あくまで人の動きをサポートするものですから、そこには日本の会社ならではの風土や理念がどうしても深く結び付いてきます。NECソフトが最も長けているのは、こういった部分ではないでしょうか。これまで培われてきたナレッジを応用していかないと、良いものはできないと思います。

企業の風土とニーズがナレッジマネジメントツールを育てる

森戸

ナレッジマネジメントのツール選定には、そのツールに理念があるかどうかが前提になります。ブログや電子メールですら、僕らはナレッジマネジメントのツールであると考えます。ルールを作ってメーラーに蓄積していけば、それはナレッジツールとして捉えられるものになります。ナレッジマネジメントのシステムを考えると、例えばNECソフトの場合ですと、自社で使われてきたナレッジマネジメントツールを販売されているわけですが、そのツールにどういった思想を植え込んでいるのか、という部分が重要になってきます。その思想に共感できる、あるいは風土が似ている会社は、そのツールを上手く使うことができると思います。どういう風土を持った会社がこのツールを作ったのか、どういった考えでこのツールを提供しているのか、そういうところまで導入する企業は見ていくべきだと思います。

齋藤

そうですね。「KnowledgeWorld」も弊社の現場で培われたノウハウによって発展してきたナレッジマネジメントシステムですし、また「KaBridge(カブリッジ)」という株主総会運営支援システムも提供しているのですが、これも同じように弊社の株主総会の運営に利用していたシステムを、そのノウハウを活かしてお客さまに販売している製品です。日本版の株主総会のやり方に合っていると、お客さまからは非常に高い評価をいただいています。

森戸

システムを使う側の企業の発想で言いますと、NECソフトが実際に活用されてきたシステムとなると、ナレッジマネジメントにせよ株主総会運営にせよ、頭の中に活用イメージが浮かびます。これが先ほど僕がお話ししたインフォメーションマネジメントです。「こういう風にして使えばいいんだ」と分かって導入されるシステムは、当然ポジティブに使われます。特に独特の体質を持った日本の企業の場合は、その活用イメージを持てるか持てないかが重要なポイントになってきます。活用のイメージが持てないと、使う方のモチベーションにも繋がりません。

また、いわゆる2007年問題という雇用問題が昨年、言われていましたが、団塊の世代の方々がこれからどんどんと退職されていく中で、彼らの頭の中にあった暗黙知が社外に抜けていっています。企業のナレッジの空洞化という状況を迎え、おそらく昨年ぐらいから各企業ともナレッジマネジメントについて真剣に考え始めていると思います。これまで会社を支えてきたナレッジが企業から失われていく中で、そういったナレッジを社内に蓄積し、共有できるようなナレッジマネジメントシステムが求められているのではないでしょうか。

齋藤

団塊の世代の方々が経験されてきたことは、企業にとって非常に大きな財産です。雇用延長などの制度もできていますが、社内外の有識者や団塊の世代の方々が語り部となって、経験してきたことを社内のいろいろな場所で伝えていくといったことも盛んに行っています。また、やはり製品を製造する上で属人性といったものを排除していくプロセスと培ったノウハウを伝承するシステムを確立していかなければならないと思います。優秀な人が辞めてしまうと大きな財産も企業からなくなってしまうような会社にはしたくありませんね。

森戸

最近では、日本は過去の大国だと言う方もいらっしゃいますが、実際は様々なノウハウと底力を持っている国だと私は思います。そのノウハウの使い方をこれからはみんなで考えていかないといけません。新しいものが良くて、古いものは悪いという考え方ではもう先に進めません。古いものの中にこそいろいろなノウハウが蓄積されているわけですから、そこをITによって上手く補完していく情報システムが作られれば、その企業の強さを保持できるのではないでしょうか。そういった意味でもナレッジマネジメントに寄せられる期待はとても大きいものであると言えるでしょう。

NECソフト ナレッジマネジメントの歩み
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